2025/12/12 21:00

アメリカ西海岸のクラフトビール革命を牽引してきたブルワリー、ストーン・ブルーイング(Stone Brewing) は、その「大胆さ」と「妥協なき品質」で知られています。


1996年にグレッグ・コックとスティーブ・ワグナーによってカリフォルニア州サンマルコスで設立された同社は、当時市場を支配していた画一的な大量生産ビールに対して、風味豊かなビールというオルタナティブを提供することを使命としました。


Stone Brewing | Craft Beer & Brewery Tours

https://www.stonebrewing.com/


「ウエストコーストIPA」のパイオニア

ストーンは、特にホップを強調したウエストコースト・スタイルIPAの開拓者の一つで、現代のクラフトビール革命に火をつけました。彼らにとってIPAは最も得意とするスタイルで、看板商品であるストーンIPA(Stone IPA, ABV 6.9%)は今も売上No.1を誇ります。


ただ、ストーンの代名詞と言えば、強い個性の持ち主であるアーロガント・バスタード・エール(Arrogant Bastard Ale, ABV 7.2%)です。そのラベルには「これは攻撃的なエールだ。たぶん君は好きではないだろう」という挑戦的なメッセージが記されていて、この排他的なブランディング戦略が熱狂的なファン層を生み出して、クラフトビールコミュニティ内でストーンの地位を確立しました。


また、ストーンは「鮮度」を重視することで知られていて、パッケージに「缶/ボトル詰め日」と「推奨賞味期限(Enjoy By Date)」を明記したパイオニアでもあります。


商標権訴訟の勝利とサッポロ傘下へ

ストーンの強固なブランドアイデンティティは、法廷でも証明されました。


同社は、ビール大手モルソン・クアーズ(Molson Coors)が「Stone」の商標を侵害したとして訴訟を起こして、2024年に第9巡回区控訴裁判所が5,600万ドル(約87億円)の賠償金支払いを命じた陪審評決を支持しました。この勝利は、ストーンのブランド名の揺るぎない価値を裏付けています。


かつては「売却しない」という独立精神を強く掲げていたストーンですが、2022年6月にサッポロU.S.A.によって1億6,500万ドルで買収されます。


これによって、共同創業者のグレッグ・コックとスティーブ・ワグナーは会社を去りましたが、ブランドと従業員は維持されて、現在はサッポロ・ストーン・ブルーイングとして事業を継続しています。


サッポロの主な目的は、ストーンがカリフォルニア州エスコンディドとバージニア州リッチモンドに持つ米国内の生産拠点を獲得することでした。


サッポロ・ストーンは、合計6,000万ドルを投じて設備を拡張していて、現在、これらの工場でストーンのクラフトビールと並行して、米国市場向けのサッポロプレミアムラガーの醸造・パッケージングを行っています。これにより、サッポロ・ストーンは米国内のブルワリー生産量でトップ10入りを目指しています。


ストーンのシンボルである「ガーゴイル(Gargoyle)」は、歴史的に邪悪な霊から身を守る守護者で、ストーンの絶え間ない最高のビールを求める探求を表しています。


体制に抗い続けた「革命家」ストーンは、今、日本の醸造技術と資本力を背景に、新たな成長局面を迎えています。